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焼酎スタイリストyukikoの蔵見学レポート
<櫻の郷酒造編>

焼酎スタイリストyukikoの蔵見学レポート<br><櫻の郷酒造編>

焼酎スタイリストyukikoです。宮崎県日南市北郷町にある櫻の郷酒造株式会社に伺いました。櫻の郷酒造は豊かな緑と水に囲まれた土地柄を活かし、同町にある猪八重渓谷の伏流水を仕込み水や割り水に使用している酒造蔵です。

1年を通して宮崎県の木に指定されている飫肥杉(おびすぎ)も見ることができます。春には蔵周辺に桜が咲き、櫻の郷酒造の名前ぴったりの景観も楽しめます。さらにテニスコート28面分の広さがあるレンガ造りの甕貯蔵庫も必見!なかなか見ることが出来ない規模なので、実際に見られるのがとても楽しみでした。

一般の方も事前に連絡をすれば蔵見学ができますので、ぜひ一度足を運んでみて下さい。今回は皆さんが蔵見学に行かれた際にぜひチェックしてほしいおすすめポイントを私の体験レポートと合わせて紹介します。櫻の郷酒造ならではの本格焼酎の楽しみ方もナビゲートしますよ!

■必ずここを見て!焼酎スタイリストyukikoのおすすめポイント①赤レンガ甕貯蔵庫

焼酎好きの方、お酒好きの方には必ず見て欲しいのがレンガ造りの甕壺貯蔵庫です。総面積が約5,600平米、テニスコート28面分の敷地には焼酎が入った甕壺が5,000基以上も並んでいます。蒸留を経た原酒がここで管理されています。室内の温度管理は人工的には行わず、日南市の温暖な気候と共存して大事に貯蔵されています。

櫻の郷酒造は麦・芋・米焼酎を製造しています。それぞれを貯蔵する時にしっかりと原料別管理ができるように甕壺に記す文字を色分けしています。写真のように赤字で書かれているのは芋焼酎の甕です。麦焼酎は黄色、米焼酎は白と識別されて貯蔵しています。

甕壺で貯蔵された焼酎はタンクで貯蔵されたお酒に比べるとまろやかな酒質になります。長期貯蔵や古酒といえるのは3年以上貯蔵された焼酎のことを表し、この赤レンガ貯蔵庫で美味しいお酒になるために熟成期間を過ごします。

そのなかでも何十年も長期間貯蔵している貴重な原酒は、甕壺貯蔵庫にある別室で静かに時を重ねています。この部屋は奥行が40mもあり、700ほどの甕が保管されています。見上げるほどの甕が並んでいる様子は圧巻です!ここまでの広さと甕壺の数を見られる焼酎蔵は珍しいので、櫻の郷酒造に見学をされた際には皆さんに必ず見てほしい場所です。

■櫻の郷酒造の酒造りを見学!1次仕込みの現場へ

ステンレスの貯蔵タンクの前を通って、1次仕込みの現場へ。ここでは櫻の郷酒造の麦焼酎、芋焼酎を造る最初の段階である麦麹、米麹を製造しています。質の良い酒母を造るために、徹底した衛生管理のもと仕込みが行われていました。
櫻の郷酒造の1次仕込みでは、原料となる麦や米を蒸して種麹をまいて、41時間かけて麹を造ります。できあがった麹と清らかな水と酵母を混ぜて1次仕込みをし、5日間かけて温度管理を行い健全な酒母を造ります。

■必ずここを見て!焼酎スタイリストyukikoのおすすめポイント②巨大な「回転式自動製麹装置」

1次仕込みの現場でぜひ皆さんに見てもらいたいのが「回転式自動製麹装置」です。これを設置している焼酎蔵は限られていますので、皆さんにもその大きさを体感してほしいですね。この写真のように引きで撮らないと入りきらないほど1基が巨大な設備です。

櫻の郷酒造にはこの装置が2基あり、麦麹・米麹を2基の回転式自動製麹装置で造ります。装置内には大きな手入れ機(ローラー)が付いていて、1回の製麹量は約6tです。酒母を造る「製麹」という工程を大量生産する時に用いられます。

■1次仕込みの部屋へ

麹と水を混ぜた1次仕込みを発酵させている部屋へ。1日目のもろみも中を覗くと温泉が湧いているようにブクブクと泡が立っています。4日目になると表面がさらに黄みが強くなってきます。発酵具合を確認する時は、蔵人がタンクの中のもろみを実際に触ってチェックしています。発酵が進んだ5日目に2次仕込みの工程へ進みます。

■2次仕込みの現場では、さつまいもの粉砕シーンが見られました!

この写真は芋焼酎の2次仕込みで使用するさつまいものいも切りの様子です。傷んだ部分が入ってしまうと焼酎の品質が下がってしまうため、傷んでいる部分はすべてカットしていきます。良質な焼酎を造るために欠かせない大事な作業です。

そのあと、さつまいもを蒸かして粉砕します。この写真は南九州産の「高系(こうけい)14号」という赤芋品種です。この周辺では蒸かしたさつまいものホクホクとした美味しそうな香りが漂っていました。これは赤芋仕込みの焼酎に用いられます。

■必ずここを見て!焼酎スタイリストyukikoのおすすめポイント③原料違いによる2次もろみの色

1次仕込みでできたもろみに粉砕したさつまいもを加えた2次仕込みでは、原料の違いによるもろみの色に注目してみて下さい。こちらの写真は赤芋品種「紅あずま」を加えた2次仕込みの様子です。紅あずまは皮が赤紫色をしていて割ると黄色いさつまいも。スーパーで食用として売られているため、皆さんにとっても馴染みがある品種です。2次仕込み初期のタンクを覗いてみると、紅あずまの赤紫色の皮も一緒に使われていることがわかります。

隣のタンクにはさつまいも品種「コガネセンガン」で仕込んだものが。コガネセンガンは皮が白く、焼酎造りによく用いられる品種です。コガネセンガンと白麹を合わせたタンク、黒麹と合わせたタンクもあり、原料の違いによって色や漂う香りが異なる様子を間近で感じることができます。

こうやって見比べられるのは櫻の郷酒造が様々な原料を使って焼酎造りをしているからです。そんな製造の様子を皆さんも見学できますので、原料による違いにも着目してみて下さいね。

■櫻の郷酒造のやわらかな酒質を生む3台の蒸留器

櫻の郷酒造の蒸留器は常圧と減圧の併用可能な蒸留器を使用しています。3台とも本体の一部は銅製で、わたりは一般的な蒸留器よりも短めであることが特徴です。櫻の郷酒造が大事にしている柔らかな酒質を生む設計になっています。
蒸留の工程を経て、原酒は貯蔵されます。先に紹介した赤レンガの貯蔵庫や敷地内に立つタンクで時間をかけて「美味しい焼酎」に育っていきます。

■まだまだ見どころ満載!「焼酎道場」ではすべて手作業による焼酎造り

本格焼酎は日本の伝統文化産業です。それを守り伝えていくため、櫻の郷酒造の敷地内には明治・大正時代の酒蔵を再現した「焼酎道場」が建てられています。機械のない時代には職人の手作業で麹造りからすべて酒造りが行われていました。今も焼酎の製造時期になると、職人さんが実際に仕事をしているところを見ることができます。

■自分だけの焼酎が作れる!焼酎スタイリストyukikoのおすすめポイント④焼酎ブレンド体験

櫻の郷酒造に行かれた際にぜひ体験してほしいのが、焼酎道場内でできる「焼酎ブレンド体験」です。私も取材を忘れてしまうほど素で楽しんでしまいました!ここでは甕に入った原料別の芋焼酎や麦焼酎が常時6種類あり、好みの焼酎をブレンドしたオリジナル焼酎が作れます。蔵おすすめのブレンドパターンも8種類くらいあるのでブレンド初体験の方も安心して楽しめますよ。私も櫻の郷酒造の皆さんに教えてもらいながらチャレンジ!

まずは、どのお酒をブレンドするのか決めます。持ち帰りにも便利な720mlサイズの焼酎ボトルに気になる焼酎を選んでいきます。私は仕事仲間へのお土産として炭酸割りに合いそうなブレンドパターンをセレクト。案内に沿って赤芋焼酎480ml、白麹焼酎180ml、黒麹焼酎60ml、合計720mlになるようにブレンドしました。最初に赤芋焼酎をビーカーへ注ぐ時、元栓を占めるタイミングがつかめなくて490ml入れてしまったハプニングも!アドバイスを受けながら最終的に720mlになるように調整。

焼酎を瓶詰めしたあとは、ラベル作成です。焼酎道場にペンやシールも常備されているため、ご家族で一緒にラベル作成をするのも楽しいと思います。蔵見学を思い出しながら自宅でオリジナル焼酎を飲むのも良いでしょう。焼酎は長期保存が可能なお酒なので記念日に乾杯するための1本を作るのもおすすめです。

今回、私は櫻の郷酒造の営業部長 寺田さん、製造課長 有田さん、取材チームのカメラマン川床さんと出口さんにも日南市や櫻の郷酒造の焼酎に対する思いをラベルに綴っていただきました!宮崎県を訪れた記念に県のシンボルキャラクター「みやざき犬」のシールも貼って……みんなの焼酎に対する思いが詰まった愛嬌たっぷりの「yukikoオリジナルブレンド焼酎」が完成!

今回、櫻の郷酒造取材の記念ボトルになりました!こうやって皆さんもお好きなブレンドボトルを作ってみて下さい。私は東京に戻って、さっそく旅の思い出を語りながら仕事仲間と「yukikoオリジナルブレンド焼酎」で乾杯!焼肉と「美味しい1杯」を楽しみましたよ!

■焼酎スタイリストyukikoの「櫻の郷酒造おすすめメモ」

「焼酎スタイリスト」として國酒取材や撮影などで様々な酒造蔵に伺っているなかで、どの蔵にもそれぞれの良さがあると思っています。その長所や個性を“時流”(時代の流れ)に合わせて全国の皆さんに伝えていく活動をしています。今回伺った櫻の郷酒造は、宮崎県日南市の穏やかな環境下にあって伝統文化「本格焼酎」がとても身近に感じられる場所です。焼酎に馴染みのない方や首都圏など宮崎県外にお住まいの皆さんも気軽に楽しめます。宮崎県に行かれた際には実際に蔵に足を運んでみるのもおすすめです。皆さんも楽しみながら櫻の郷酒造の本格焼酎に触れてみて下さいね!

■見学の申し込み方法・金額など

蔵見学に関する詳しい情報はこちらから。

■yukikoプロフィール

焼酎スタイリスト®、ファッションスタイリスト。色彩総合プロデュース「スタイルプロモーション」代表。全国の自治体や蔵元と連携して、スタイリストとして日本のお酒「國酒」を“流行×オシャレ”に発信。トレンドや美容情報に精通し、ファッション誌やビューティー誌にも登場。”時流”を掴んだお酒のコメントやアドバイスには定評がある。全国で講演や焼酎泡盛講師・レシピ監修・イベントプロデュース・企業研修などを務める。大学の講師として教育分野にも従事。販促色彩・ビジュアルプロモーション・ブランド構築を専門とし、日本各地の伝統文化や地域文化産業を東京からサポートしている。